【レビュー】合理的な人生設計 橘玲著
この本は効率よく、幸福になる方法について書かれた本です。
書籍紹介にあるように「幸福」な人生を最適、効率的に達成するための「成功」へのアプローチについて解説されています。
この本を読む時に以下の3つを抑えておくと読みやすいです。
1.著者は幸福度を図る客観的な指標として「金融資本(資産)」「人的資本」「社会資本」の3つを用いています。主観的なものではなく、他者から見た客観的な指標を用いています。
2.日本人は合理的でない、合理的を憎んでいるので、合理的に振る舞えば振る舞うほど有利になる。特に仕事の選択などは大きく優位に働く。
3.著者は内向的なタイプなので、「社会資本」の効きが悪く友人関係などから得られる喜びなどが平均的な人間より効きが悪いため、「人的資本」を軽視しがち。
著者による幸福度測定の3つの客観的指標
著者は幸福度を図る客観的な指標として「金融資本(資産)」「人的資本」「社会資本」の3つを用いています。主観的なものではなく、他者から見た客観的な指標を用いています。
金融資本:資産(現金、株、家)など
人的資本:自分の労働から得られる金銭・自己実現
社会資本:共同体という絆から得る友情や愛情・SNS のフォロワー数など
金融資本の攻略方法=世界経済インデックスファンドなどに積み立てていく。再現性が高い。誰がやっても結果を出せる方法が確立されている。
人的資本の攻略方法=自分の能力が優位性(他人より得意)を持つ市場に時間・労力を1点集中させる
社会資本の攻略方法=再現性が低い。あえて言えば大量の人間と出会い自分と似ている人を探し出し、その人と仲良くなる。
再現性の高さと、著者の興味を記したものは以下になります。僕の主観が入りますが、こんな感じだと思います。
日本人は合理的でない、合理的を憎んでいるので、合理的に振る舞うほど有利になる
他のプレイヤーが期待値の低いふるまいをしている中で、自分は期待値の高いふるまいをしていれば、他のプレイヤーと比べますます有利になる。
例えば、日本人は世界でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいる。これは最近ではなく、経済の調子が最も良かった バブル期 から同じ結果が出続けている。
会社が従業員を解雇しにくい転職の流動性が低い市場だからこのような悲劇が発生してしまう。
転職回数が多い場合、自分にあった仕事が見つかる可能性は高い。自分にあった仕事はやりがいもあり、自分に向いているということは人より 同じ 労力かけてもうまくできることであり その場合 当然 報酬も高くなる傾向にある。
仕事がつまらないなら自分に向いていない仕事をしていることになるし、その場合、必然的に収入も低くなる。にも関わらず他に転職せずに新卒で入った会社に居続けるのが現状。
内向的な著者にとっての社会資本と人的資本
著者は内向的なタイプなので、「社会資本」の効きが悪く友人関係などから得られる喜びなどが平均的な人間より効きが悪いため、「人的資本」を軽視しがち。
社会資本を攻略する方法の歯切れが悪いのは以下2点が原因
ⅰ著者が社会資本に興味が薄い
ⅱ社会資本(友人関係・家族関係)などを豊かにする再現性が高い方法がない
ⅰ著者が社会資本に興味が薄い
例えばおわりで著者は以下のようなことを書いています。
感染症が広まった後、直近3年は自宅と仕事場を徒歩で往復する毎日だが、苦痛だと思ったことはない。感染症が広まる前も、海外旅行に行く以外はほぼ同じ生活。
内向的で明らかに社交的なタイプではないので、友人関係などに含まれる社会資本の効きが悪いタイプ。このタイプの人間が書いている文章というのを理解しておくと社会資本を重要視するタイプの人は読み進めやすくなると思う。
間違いなく、社会資本が最も大事な人には合わない1冊(笑)
ⅱ社会資本(友人関係・家族関係)などを豊かにする再現性が高い方法がない
また、金融資本を増やす方法は全世界株式インデックスに投資するなど、すでに確立している。しかし、素晴らしい友人や素晴らしい家族関係の作り方という確立した方法は今のところ発見されていない。
合理的とはなにか
さて、タイトルにもなっている合理的とは何でしょうか?この本で合理的とは投入したリソースよりリターンが上回ることと定義しています。。例えば 100円投入したら 110円が返ってくる。この投資は優れた投資と言えます。逆に100円投資しても100円のリターンでは優れたと投資とは言えません。
合理的な振る舞いで再現性があり、効果が出やすいのは金融資本になります。そのため。やはり金融資本を中心としてこの本は書かれています。
睡眠と運動という最も効果的な投資
この本で面白かったのが。睡眠と運動というのは投資として最高のリターンを出してくれるという点です。
資産10兆円を超えるAmazonの創業者ジェフ・ベゾスが最も大事にすることは8時間寝ることです。ラットは寝なければ平均15日で死んでしまいます。
この本の中でどれだけ 制限時間を確保することが大切なのか8時間寝ることが、創造性や技能を高めるを高めることにもつながり ストレスを解消することにもつながることが書いてあります。
本文から引用
睡眠研究者のアントニオ・ザドラとロバート・スティックゴールドは、ほんとうに眠っているあいだに能力が向上するのかをタイピングを使って検証した。被験者に「4-1-3-2-4」の順番でひたすら数字をタイプしてもらうと、最初の5、6分で約60%速くなったが、そこで頭打ちとなり、10分間の制限時間が終わるまでに速さは変わらなかった。午前中に練習して夜にテストしたところ、指はちゃんと覚えていたようで、練習終了時と同じ速さで入力できたが、速くはなっていなかった。ところが、夜に練習して翌朝テストすると、タイプが15〜20%速くなり、間違いも減っていたのだ。同様の学習効果は視覚や聴覚の識別課題でも確認されていて、どれも睡眠後に成績が上がった。
参考書籍
睡眠こそ最強の解決策である
貯金は1億円までは幸福度が高い
またお金を貯めるという行為も1億円までは実際の価値以上に幸福感を得ることができるのでお得という点です。
この理由はまあ 1億円があれば何があっても大丈夫という感覚でしょう。
1億円というのはある程度の事故にあっても致命的な怪我を回避できる頑丈なシートベルトのようなものだと思います。
しかし 1億円以上になった場合は、ビールの1口目に対して 2口目、3口目、4口目が美味しくなくなるようにお金を貯めることで得れる幸福は軽減してしまいます。
現実世界で評価され結果を出す方法
また、アート市場で結果を出す方が実に面白い。
テニスなどのスポーツのように明確な結果が出ない場合は、どのように振る舞うと良いのかいう結果があります。ほぼ全ての仕事はテニスほど客観的(明確)でなく、アートほど主観的ではありません。
さて、アート市場で結果を出すにはネットワークのハブに所属するのが良いとあります。
どういうことでしょうか?
以下本文を引用します。
バラバシは、「三流の美術館やギャラリーでキャリアをスタートさせるなど、ネットワークの周縁で活動を始めて成功したアーティストは50万人のうちたった227人」だという。確率でいうとわずか0・05%程度にすぎない。プロテニスとちがって、アートの世界にはある作品(たとえばデュシャンの小便器)がほかの作品より優れているという客観的な指標がどこにもない。そのため、作品の価値はネットワーク(「一流」とされるギャラリーやキュレーターの評価)で決めるほかはない。そして、幸運にも「価値がある」とされた美術作品は、その後も価値を維持するばかりか、ますます値を上げていく。なぜなら、そうすることが「美術業界」の関係者全員の利益になるから。
さて、更に面白かったのはコンクールで最終選考に残った演奏家の中で誰が優勝したのかと予想する試験です。
評価方法は以下です。
①音だけの演奏を聴く
②音の入った動画で演奏を聴く
③音を消した動画のみで演奏を見る
プロの音楽家と一般人に予想してもらいますが、以下の選択肢の中で音を聞かない③が1番正解が高かったのです。
また、正答率が一番低かったのは①でした。
最終選考に残るぐらいなので、みんなうまいので、最後はどれだけ情熱的に鍵盤を叩くか見た目が音楽家としてふさわしいなどの勝負になるというなんとも面白い結果でした。
合理的な人生設計は読みたい本が増える一冊
文中に記載されていた本を色々と読みたくなる 一冊
とりあえず読もうと思った方は以下の本です
■睡眠本
睡眠こそ最強の解決策である
■時間本
いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学
合理的な人生設計のまとめ(著者:橘玲)
●睡眠と運動ほど効率の良い投資はない
●10兆円を超える資産を持っている人間が最優先するのは睡眠と運動
●人生のリソースをどこに振り分ければ良いのか悩んでいる人に最もおすすめできる1冊。特にやりたいことがない人にもささる珍しい一冊(Amazonのレビューにもやりたいことがない人におすすめの一冊とありました)
●合理的に幸福になるということを考えた本 なので、趣味が合う合わないはあるにせよ読んでおくと役に立つ本
●参考書籍が多いため、読みたい本が増える1冊でした。